知れば知るほど面白い! 日本地図150の秘密

本書のタイトルには『日本地図１５０の秘密』とあるが、コンセプトは「日本地図を眺めると、まったく読めない地名やおかしな県境など……普段は意識することが少ないかもしれない……疑問をひも解くと日本各地の風習や事件、自然など意外な事実を知ることができる」（「商品の説明」より）とあるように、広く「地名」や「地形」から観るトリビアな事実や経緯を紐解くものと言って良い。「地名」などの起源・由来等の検証を趣旨とするものではなく（但し幾つかのトピックは通説を取り上げるものもある）、地理、地学、地誌、土地・地域・市町村等に関連する政治・経済・歴史などまで広く対象としている。『１５０』のトピックは概ね１ページないし見開き２ページで纏められ、適宜イラスト及び写真等が展開される（ペーパーバックという物理的体裁と恐らくカラー写真のモノクロ印刷のせいか写真はコントラストが弱く見難いものがある）。Ｂ６判・ソフトカバー（ペーパーバック）・モノクロ本文約２００ページ（索引あり）・税別５３７円、構成・内容等から綜合すると、コスト・パフォーマンスは悪くはない。匿名著者と言う辺りが気になるが、歴史考証や史料分析等は殆ど対象とするものではないので、許容範囲と言えるだろう。地図・地理“マ ニ ア”には物足りないだろうが、一般読者向けのトリビアとして悪くはないと思う。本書の構成・内容はこのページの上の「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、以下個人的に興味を惹いたトピックについて幾つか紹介したい。まず国道関連トピック（34〜36・78・166頁）は『ふしぎな国道 (講談社現代新書)』辺りと同旨で、「平安京の西側」（188〜189頁）も『京都〈千年の都〉の歴史 (岩波新書)』とほぼ同旨であり、その他私が気付く限りでは内容の精度・信頼性に大きな疑問のあるトピックは見受けないように思う。「富士山頂」の持ち主（29頁）、「世界一の郵便ポスト」（88〜89頁）、「品川駅」の経緯（128〜129頁）など、私でも知っているトピックも幾つか見受けられるが、東京の「首都」の法的意義（42〜43頁）、「日本一短い川」（64〜65頁）、ＪＲの「１区間運賃」が日本一の路線（74〜75頁）、東京五輪で消えた地名（107頁）、「日本最大の砂丘」（169頁）など、なかなか面白いトリビアを集めている。中でも感心（一見奇妙な表記の意外な理由に落胆）？したのが「キトラ古墳」の名称（表記）の理由である（96頁）。本文でも指摘があり、起源はよく判らないようだが、諸説については国営飛鳥歴史公園の公式サイトに詳しい。なお「琵琶湖」のトピック（140頁）では、「琵琶湖」の河川 法上の位置付け（「一級河川」）について解説しているが、“霞ヶ浦”も同様に「一級河川」の利根川水系に含まれている。