胎内都市: 暗闇の世界にひろがる地下水道の迷宮

私は画集やイラストレーションの本を買うのが好きです。写真は、現実にあるものを写し撮るだけというイメージがあり、あまり好きではありませんでした。「胎内都市」に出会って大きくその考えが変わりました。白汚氏の写真の醍醐味は、目に見えない部分を見えるようにし、独自の観点でそれら被写体を具象化しているところにあります。ほんとは汚水が流れる場所ということは、皆さんが知っていることでしょう。ところがその汚水が美しいのです。汚いという感情は一切起こらず、現に汚物やドブネズミやらは全く写っていません。本来なら真っ暗である下水道に光と色彩を与えていき芸術へと昇華させる方法は、絵画のプロセスと同じように感じます。ところが、絵画と圧倒的に違うのは、絵画では、いとも簡単に想像でものを描くことができるのに対し、写真はその場に被写体が存在し、写真家がその場に実際に行かないとはじまらないところでしょうか。私はこの作品群を絵画のような写真芸術と呼びたいです。そして白汚氏の行動力に脱帽です。