解体―国際協力銀行の政治学

小泉内閣が行った特殊法人改革の一つである政府系金融機関の統廃合問題。その8つの政府系金融機関の一つである国際協力銀行の分離・解体をめぐるパワーゲームが、豊富な資料・実体験をもとに描かれている。著者は、これまでにも政策過程を緻密に再現・分析することにより、その問題点を鋭く指摘してきた。「日米オレンジ交渉」や「国鉄改革」、「山一証券破綻と危機管理」など、記憶に残る著書は多い。その中でも、特に本書が刺激的なのは、著者自身がこの政策過程のアクターであったからではないだろうか。生きた政策過程が学べる希書。以下、各章の内容。第1章「融資と援助」では、国際協力銀行の２つの部門である国際金融（旧日本輸出入銀行）と海外経済協力（旧海外経済協力基金）の業務と役割の違いを、さまざまな視角から論証。第2章「国際協力銀行の誕生」では、水と油と思われた両者がなぜ「結婚」したのかについて、その政治的な背景を詳述。第3章「既得権益の維持・拡大」では、決して幸せではなかった両者の結婚生活の様子や、不透明な実態を説明。第4章「小泉内閣と政府系金融機関改革」からは、国際協力銀行をはじめとした政府系金融機関の改革へと話が進行。小泉首相の並々ならぬ改革へのこだわりが記されている一方、一時は、その改革にブレーキがかけられたことなども紹介。第5章「政府系金融機関論議の本格化」では、景気回復とともに改革の議論が再燃し、さまざまなアクター間に「凄まじい神経戦」が繰り広げられたことを証言。第6章「最後の山場」で展開される攻防は、「神経戦」とたとえた前章と比較するなら、さしずめ「消耗戦」といったところ。国際協力銀行を解体せんとする者と、体制の維持を図ろうとする者との最後の力を尽くした攻防に、一応の決着。